富山の包丁工房を見学。
白馬の仕事が落ち着くこの時期は、白馬から行ける範囲で食べ歩きなどをしています。
いつもの富山巡りは食べ歩きの好きな友人に聞きながらでしたが、今回は最近知り合った富山の地元密着料理人の案内で行ってきました。
先ずは本職用の包丁一筋「祐成(スケナリ)」さんの生産現場を見学。
フレンチの料理人なんですけど、和包丁について無知だったのを思い知らされました。。
あまりに勉強不足で恥ずかしいのですが、金属の種類や用途の違いなど、洋包丁とは比べ物にならないくらい多彩で、しかもここにしか無い技術で作られる最高峰の和包丁を目の当たりにして惚れ惚れ。
一から工程を教えて頂き、自分もこうした職人の方々が作り上げた特別な1本が欲しくなりました。
実は少し前から長年使い続けた筋引きの刃が無くなってきていたので、新しい包丁を買おうと思っていました。
もう少し自分なりに包丁について勉強し直して、こちらで購入しようかと思います。
オーストラリア人の価値観。
先週は雨が降ってシーズン終了の雰囲気の白馬でした。
今シーズンはかなり早いですが(昨年の3月下旬くらいのコンディション)3月は毎年そんな感じなので、平日はオーストラリア人スタッフのやりたい企画などをさせています。
今回企画はカクテルパーティーでしたが、平日のまだ明るい時間によく入りましたね。
音楽もスタッフの友人達。
ギターが出来る人、バイオリンが出来る人、カスタネット代わりにスプーンを鳴らして参加する人(笑)
最近凄いと思う事は、オーストラリア人の今を楽しもうというそのエネルギー。
これも企画、宣伝、集客を2〜3日でやってこの状態ですから大したものです(普段の仕事と比べたら数倍早いw)
この3ヶ月の間に普段から飲みに行ったり、一緒に滑りに行って作ったコミュニティからSNSで拡散。
おそらく白馬で日本人には出来ないと思います。
彼らを見ていると、日本の地方に足らないところはこういうエネルギーだよなぁ、と思ったり。
駄目な理由を「雪が無いから」と言っても雪は来ませんし、「新幹線が通れば」「高速道路が通れば」なんて言っても無い物は無いので、彼らのように今の現状を楽しむ前向きなエネルギー。
実は野外でこれをやって近隣と揉めたり、なんて事もあります。
ちょっと行き過ぎたところは監督責任のある自分達の責任な訳で、こうした勢いを止めないで上手く良い方向に持っていきたいですね。
迷惑をかけないように平日、昼間で滑るお客さんが少ない時期、時間を狙い、しっかり許可も取った上でやっていますが、近隣から騒音がと言うなら後は行政の問題だとも思います。
何となくダメ、では彼らに伝わりませんから、音も数値化してこれ以上はダメ、みたいに分かり易く地域の決まりを外国人に伝えないといけませんね。
(外国人と働いていて、はっきり分からないといけないとつくづく思います、、。)
皆んなが楽しそうにしているんですから、止めさせるではなくて、協力して上手くやる方法を考えられないものですかね、、。
地方を変えるのは「若者、よそ者、バカ者」なんて言います。
前者2つを排除している日本の地方にはあまり先が無いような、、。
外国人と働いていると、色々考えさせられます。
素敵な暖炉の絵。
日本に遊びに来ているオーストラリア人スタッフの妹さんがアーティストという事で、少し寂しかった暖炉の上に絵を描いて貰いました。
描く前にドイツ人支配人のBernd(ベンさん)のイメージを伝えて入念なミーティング。
モデルはBar横のこちらの絵。
描き始めてビックリするくらいアッと言う間に出来上がっていきます。
暖炉の質感や店内の雰囲気とマッチした素敵な絵を描かれました。
ウチはレストランも宿泊もリピーターが多いですから、またこちらの絵で喜んで頂けると思います。
絵の出来が良かったので、出入り口にドイツ語でありがとう、もお願い(笑
今日、昨日の雪予報のおかげで今週末もほぼ満室ですし、白馬ももうひと頑張りですね。
白馬で学んだお客の好み。
Haxe(ハクセ)/Pork Knuckle(ポークナックル)焼き上がり!
ハクセはドイツ語で豚のスネ肉の事。
ドイツでは有名な料理で、特にヨーロッパ系と中国系のお客さんに喜ばれています。
まさかスキー場にハクセがあるとは思わないので、ビックリされますが(笑
こちらにベッタリとジャーマンマスタードを塗って、自家製のザワークラウトにジャーマンビールは最高だと思います。
しばらく故郷に帰れないでいる在日ドイツ人の方は本当に喜ばれて、骨の隙間まで綺麗に召し上がっていました。
ちなみにオーダーが入ってからでは調理が間に合わないので、事前予約でお出ししています。
ドイツでは焼く、煮るの調理法があるみたいですが、ウチはドイツ人のBernd(ベンさん)の指導の元でローストにしています。
マリネした肉を外は日本人なら硬いと思うくらいにパリパリに、中は二股に分かれた骨の間までしっとりジューシーに焼き上げますが、これが難しいから面白い。
最近思うんですけど、完璧な火入れは均等に入っていれば良い訳でも無く、この位の塊なら適当にムラがある方が食べ続けていて楽しい気もします。(勿論、ストライクゾーンの間でのムラ)
フランスでも温度管理されたような低温調理から炭やパイ包みのような古典的な火入れに変わってきていますしね。
自分もParis時代はPassage53に在籍していたのであの火入れは憧れなんですけど、ウチのお客さんがギリギリの火入れを好みません。
むしろそこから少し火が入った辺りが落とし所です。
それに均一な火入れは少量多皿のコースなら一口二口で飽きませんが、この位の塊は逆に良い意味で雑に焼き上げた方が美味しいと思います。
(焼き上げている間向きを変えたり、余分な脂を拭き取ったり、乾かないようにまめにアロゼをしたり、古典的ですけどかなり気を遣っていますが)
フランスから帰国した当初は地元長野に帰って、よく有りがちな東京でシェフをして星を獲得からの道を外れましたから他のシェフからはドロップアウトしたと言われましたが、白馬で全く好みの異なる外国人客を相手にしながらしっかりお客さんのニーズに沿った料理を出す事を思い出した気がします。
(自分の思い描く理想の料理も作りたいので、そちらは軽井沢でと考えています。)
真空して温度管理されたお湯にポチャンなんかより、やはり料理人の手と勘で焼き上げるのは面白いですね。
訪日外国人客向けのメニューなので日本人のお客さんには合わないと思いますが、自分が来て4年経って白馬ではかなり飛び抜けて海外向けのレストランになってきた気がします。
Ferme36の畑を訪問。
白馬の仕事も落ち着いたので、残りの仕事をこなしつつ県内のワイナリー巡りを再開。
先ずは大町「Ferme36(フェルム36)」矢野さんの畑を伺いました。
この日はあいにくの雨。
昨年、伺った時にはまだ雪があったくらいですから暖冬ですね、、。
これだけ暖かいとウチもそうですが早いウチの開花が心配になります。
この辺りは分かりませんが、佐久でも5月中旬くらいまでは霜の心配がありますからね、、。
開花中に霜が降りると、受粉出来ずに実になりません。
ブルゴーニュからの預かりワインもお届けしたのですが、運が良い事にこの数十分後にスペシャルゲストがいらっしゃるという事で、待って自分も同行させて頂きました。
枝の節間が狭い事がとても珍しいそうです。
樹に大きな負荷がかかっているので、ポテンシャルが高いとの事。
矢野さんの畑の樹はこれで5年目ですからね、、。
5年目なら他の畑ならもう少し太いと思います。
スペシャルゲストと畑でのお話から部屋に移ってテイスティング。
大町のワイン2本に参考比較のワインが1本。
こちらが矢野さんのワインで、長野県では珍しい混植混醸ワインです。
セパージュはシャルドネ33%、ソーヴィニョン・ブラン27%、ピノ・ノワール14%、ピノ・グリ11%、シュナン・ブラン5%、ツヴァイゲルトレーベ5%、その他5%。
これだけの種類が入って初醸造で香りや味わいがまとまっているのが素晴らしいですし、これを手掛けた委託醸造先のヴィラデスト小西さんも流石過ぎ。
こちらは言わずと知れた元祖混植混醸日本ワインのクリサワブラン。
VTは矢野さんのワインと合わせて17年でした。
これらのワインを試飲したゲストのコメントが凄過ぎて、只々ビックリですね、、。
説明されても自分にはその香りや味わいが拾えない始末。
まだまだ勉強不足です、、。
本当に世界トップクラスのお話は大学の講義を受けているような素晴らしい時間でした。
あの会話に自分も付いていけるようになりたい。
残念ながら「世界が恋するNAGANO WINE」を謳うなら、生産者もあのレベルで物事を考えていかないと世界のワインシーンとはかけ離れていきますね、、。
多雨多湿な日本で、ワインを作る基準が厳しいEUの数値の範囲内で造るのが難しいのは分かりますが、その世界常識の数値内でない限りはなかなか世界には認められないというのも納得の話です。
前日が休みだったのが急な仕事で休日出勤になり、この日にたまたま代休を取ったのですが、思い掛けず素晴らしいワイン体験が出来ました!
火祭りが無事に終了。
白馬の八方火祭り(ファイヤーフェスティバル)無事に終了!
終了後はキッチンスタッフで記念撮影。
こちらはこの日大活躍のバースタッフ。
(写真は忙し過ぎて撮れなかったので、八方尾根のFBページから拝借しました。)
この火祭りが行われる名木山ゲレンデのスロープサイドにレストランがあるので、ウチとしてはシーズンで1番忙しい日です。
別の日のレストランからの名木山ゲレンデの様子。
ガラス窓が大きくて、レストラン内からゲレンデが一望出来ます。
ニューイヤーに比べたらスタッフも仕事に慣れていますから、売り上げが大台突破する程忙しかった割には大した混乱も無くスムーズに料理が提供出来ました。
随分、スタッフも頼もしくなりましたね。
毎年ここで働くのが初めて(と言うか、日本に来るのでさえ初めてな)外国人スタッフと新規オープンみたいな感じですが、今シーズンのこのスタッフ達がまた来シーズンも帰ってきたい、と言ってくれるんですから有り難いです。
物の場所、配置から日本流のルールを覚えるまで外国人相手に英語で口煩く言わないといけないので、その手間が省けるだけ助かります、、。
暖冬で早い時期にリフトも止まりそうですし、後は在庫整理をしつつ3月末まで何をして遊ぶか考えるだけですね、、。
先ずは魚不足なので、富山に行こうかな(笑
本日のお料理。
冬のシーズン中に外国人スタッフが無理なく働けるようにレシピも固めた比較的提供し易いメニューを組んでいますが、中には「本日のHot Pot」のようなその場で考える即興メニューもあります。
適当なお肉を詰めてザワークラウトとジャガイモ。
この日のお肉は塩漬けした豚バラ肉と若鶏とジャーマンソーセージ。
しっかり煮込んだら最後にグレイビーソース(Jus de viande)に食感の足しにガーリック風味のクルトン。
写真ではグツグツ感がありませんが、お客さんの前に持っていって蓋を開けると湯気が立って熱々の状態で出しています。
パリ時代に働いたL'ami jeanはシェフお任せでオーダーが入ってからシェフのステファンの指示で即興のコースを出していました。
あまりにシステマチックにするとライブ感が無くなるので、たまにオーダーが入ると面白いです。
試食してもらう度に味を調整されていたザワークラウトも、やっとドイツ人のBernd(ベンさん)の一発合格を貰えるようになりました。
ベンさんは東京の六本木でBernd's Barというジャーマンスタイルのバーを長年経営されていたので、日本に来る外国人の好みを知り尽くしています。
ジャーマンソーセージやジャーマンビールと食べてみると納得で、外国人が味噌汁の味の落とし所が分からないのと一緒ですね。
ウチはほぼ100%外国人客ですし、日本人感覚だけでやるとズレるのが白馬の面白いところです。
とにかく白馬のこちらのレストランではちまちま飾り付ける格好の良い料理よりも、外国人でもお腹いっぱい食べれて美味しい料理を心掛けています。
東京ではお客さんのニーズより自分のやりたい事を優先させても様々なニーズがあるので問題無いと思いますが、地方では的確にそこに求められるニーズに応える事は重要だと思います。
長年、東京やフランスで修業してきたのである程度の自分の料理ややり方は持っていますが、こちらではとにかくお客様のニーズを優先。
ちょっと日本人のお客様には合わないかもしれませんが、こちらに来られる訪日客の方々には好評です。
それにパリで学んだ技術も活かせていますしね。
本当に軽井沢で素材重視のガストロノミー、白馬では訪日客も満足するビストロ料理と自分がやってきた事がこれでもかと活かせる場所が地元長野にある事が有り難いです。
今週の火祭りを終えたらかなり落ち着きそうなので、外国人スタッフと一緒にもうひと頑張りしたいと思います。