先日、若手の料理人のコンペティション「RED35」がありまして、今回は年齢制限無しでテーマが「SDGs」でした。
SDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。
SDGsは2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。
コンペティションには色々と事情があって提出しなかったのですが、自分が取り組む料理人のSDGsを簡単にまとめました。
テーマ:「地方の新しい食文化をリゾートから。料理人、生産者、お客様を幸せにするエコシステム作り。」
概要:(地産地消の)料理は地域の魅力や課題を伝える優れた広報である。料理が美味しかったら食材に興味を持つ。料理を食べ続けられる様に課題にも興味を持つ。料理はお客様、生産者を繋げ、文化を守る
実施している事:
軽井沢で出張料理をしている。
拘りは地産地消。食材は長野の物を。
実家の畑仕事、自作のハーブ、食用花畑の制作。
地元で需要の減る冬季は白馬でホテルの総料理長。
佐久の職人団体「39BAR(サクバル)」などに参加し、生産者や料理人、色々な職種の方々と交流。
地域の農作ボランティアに積極的に参加。(米作、ワイン葡萄収穫など)
先ずは日本の一般的なリゾートの問題点から。
リゾートは値段が高い割に美味しくないイメージ。
地域を代表する料理人がいない。
団体客重視の薄利多売の商売。(コロナ禍では厳しい。)
多様化するニーズに付いて行けて無い。
自分のいる白馬を参考に。
格安スーパーで大量購入の冷凍食品の山のショッピングカートを見る度に色々考えさせられます。
大手ホテルもプロ向けの冷凍パック使用が多いと思います。(よく出来ているとは思いますけど。)
オリンピックからの殿様商売で、決して食のレベルが高いとは言い難い。
外国人客が多くなったことから、アルコール提供中心のお店が増えた事。
料理人も終身雇用では無いですし、早いうちから地域に貢献できるシェフになって活躍した方が長い目で見たら終身労働において安心かと。
リゾート労働の利点について。
料理以外で集客が見込める。(綺麗な海や山、雪、観光地、温泉などハイシーズンなら集客の必要無し。)
ハイシーズンのみしっかり働き、オフシーズンは自分の時間が持てる。(インプットの時間の確保。)
地域社会への貢献。
ここで何故、地元出身の料理人が良いかと言うと
1シーズンだけ好き勝手にやって、大金だけ貰って上手くいかないので出ていく無責任な都市部シェフが多いからです。(これは地方における都市部から来る地方創生コンサルに似ている気がします。)
リゾート地のレストラン運営を都市部と比べて楽勝だと舐めてかかるシェフ(もしくは都市部の成功事例をそのまま持ってくる事例)が多いのですが、仕入れられる食材や業者、客層、求められている料理や適正価格など、全く都市部とは異なります。
自分の体験から言うと、リゾートはハイシーズンの数ヶ月で結果は次のシーズンに出るので(広告でも打たないと即効性が無い)、初年度で様子見、2年目、3年目で改善で3年はかかるかと。
1年間試行錯誤ではなくあくまでシーズン数ヶ月ですし、土地勘が無ければさらに時間はかかるかと。
長い年数を腰を据えてやってくれるシェフなら地元出身に拘る必要はありませんが、やはりその土地に思い入れの強い人が適任かと思います。
都市部に集中していた料理人が地方のリゾートに拡散、移住した場合、
地方創生を各地域のリゾートの食から立て直し。
夏、冬のリゾートの相互交換。(オフシーズンの人の余る場からハイシーズンの人の足らない場所への移動、移働)
地域おこし協力隊制度などによる料理人支援。(この制度が機能しているとは言い難い。)
夏のリゾートに関しては畑との連動。(夏野菜、夏ハーブなどは素人でも育てやすいので、シーズン前に仕込んで採り放題。キッチンから出る下ごしらえなどの野菜の皮などは堆肥にして再利用。)
冬のリゾートに関しては秋シーズンによる地元の保存、発酵食の見直しなど。
これが進めば山リゾートと海リゾートの料理人のコラボイベントなど
豊富な知識を有する都市部料理人の活躍の場は大いにあると思います。
ここからはこうした観点からの自分の活動。
自分は長野県出身なので、県内で夏は軽井沢、冬は白馬をメインに仕事をしています。
軽井沢の隣町、佐久市が地元で実家が代々果樹園を営んでいるので、夏、冬のハイシーズンは料理人、他の季節は農業をしております。
自分の東京、フランス時代の経験を活かして、夏はガストロノミー、冬はビストロ料理。
この働き方だと正社員は難しいですし、自分でお店をやると固定費がかかるので夏は軽井沢の別荘族相手の出張料理人、冬は外国人向けのホテルの総料理長をしています。
先祖からの畑を守りながら野菜、ハーブや食用花の栽培、仕事で出た端材の堆肥化など、個人レベルではありますが小さくやってます。
周りに新規就農の同年代の生産者がたくさんいますから、こうした方々から積極的に食材を購入しております。
レストランの端材を堆肥に変えて畑をやる仕組みを循環農業と思ってやっていますが、参考にしたのはフランス修業時代にいたモントルイユ・シュール・メールのシャトー・モントルイユです。
こちらはフランス北部のリゾート地で、ドーヴァー海峡を渡って直ぐなのでイギリス人の夏のリゾート地として有名です。
城とまではいきませんが立派な建物に庭園、そちらを管理する庭師。
キッチンで出る堆肥化可能な端材を庭師が堆肥に変えて食材を畑で育て、毎朝入る庭師の情報で料理人が畑で食材を収穫。
そこには田舎でありながら無駄の少ない豊かな営みがあるな、と思いました。
これらが軌道に乗れば、自分の時間を得られます。
フランスに長く住んでいた事から年1回はバカンスを取りたいという事で、合間の11月に必ずフランスに行っています。
出張料理の為の買い出しからインプットの為の食べ歩きやワイナリー訪問など。
これらをsnsに投稿して集客に繋げます。
人口減少により、一人一人の価値は高まっています。
地方やリゾートには課題が多いと思いますが、これらの課題に取り組む事はそのまま仕事になりますし、社会貢献に繋がり持続可能な地域産業になります。
フランス帰国後から試行錯誤を重ねて自分は軽井沢と白馬を選びましたが、そこは人それぞれで違うと思います。
どこのリゾートでも良いと言う物でもなく、先ずは東京、大阪などから適当な距離にあるリゾートの立て直しから食のサスティナブルを考えていけたら良いのではないでしょうか。
文章にしてみて、自分の活動もかなり形になってきたと思います。
自分もこの形で続けられる自信が付いたのはここ2年の話ですが、最初の数年という時間を投資したおかげでこれからはずっと地元で地域貢献しながら仕事が出来る自信はあります。
地方を拠点に料理人をするのは都市部と比べて時間はかかりますが、長い目で見たら料理人にも地域にもメリットだとは考えています。
RED35に参加するような若くて優秀な料理人が地方に散らばって頑張ってくれたらな、とは密かに思っています。