エスカルゴ牧場を見学。
昨年の三重県の短期シェフの仕事で、限られた休みの時間にしたことが3つあります。
3つ目は「エスカルゴ牧場」の見学。
パンフレットもこんな感じで、試食するのには2日前の予約が必要との事。食べなければ分からないので、見学、エスカルゴ6個付きのブルギニョンコース(2520円)を頼みましたが、正直予約が入った段階でパートのおばちゃんが冷凍庫から取り出してオーブンに入れて完成、的に思っていましたが、とんでもない誤解でした‼
予約時間に行くと高瀬社長がいらっしゃり、先ずはエスカルゴの講習から受けていきました。
通常、食用のエスカルゴは次の4つを言うそうです。
1、ブルゴーニュ種
2、トルコ種
3、プティ(グロ)・グリ種
4、アシャティーヌ種(アフリカマイマイ)
このうち、フランス料理に使用する本物のエスカルゴは1のブルゴーニュ種と2のトルコ種。しかし、1のブルゴーニュ種は捕獲が度を過ぎた事や自然破壊で生息地の森が少なくなった為、ほとんどいなくなりました。今ではフランス国家の保護育成種に指定されていて、定められた期間、大きさでないと採取出来ない事になり市場からは消滅したそうです。
今日フランスで消費されるエスカルゴは2のトルコ種と3のプティ・グリ種。ただブルゴーニュ種と同様、トルコ種も養殖出来ないので、3のプティ・グリ種を1980年代から商人に騙されながら食してきた事になります。(殻だけはブルゴーニュ種のようです。)
ちなみに日本でよく見るエスカルゴはインドネシアなどからの4のアシャティーヌ種で、フランスではエスカルゴの表記不可でアシャティーヌの明記しなければならない代物です。
ここ「エスカルゴ牧場」は世界で初めてブルゴーニュ種の養殖に成功した養殖場だそうです。今でも養殖のブルゴーニュ種を食せるのは世界で唯一ここだけです。(フランスのレストランでも食べれないそうです。)
一連の説明を聞いた後は早速、ブルゴーニュ種のエスカルゴの試食。
見た目は料理のプロが作っている訳ではないので普通ですが、今迄食したエスカルゴでダントツですね、、。
高瀬社長は食べ方にもこだわっていて、フランスやヨーロッパを旅してエスカルゴ料理を研究。この1番スタンダードなブルギニョンバター(ニンニクパセリバター)ですがパセリ、ニンニク、エシャロットも自家製で、エスコフィエの文献を紐解きながら完成させたそうです。
2日前の予約というのも、生きたエスカルゴを下処理して完成するまで2日を要するからだそうです。(パートが作る冷凍物だと思ってしまい、スイマセンでした、、。)
実際にブルゴーニュ種のエスカルゴを触らせて頂きました。
白くて綺麗ですね、、。臭みも全くありません。刺身でも食べれるそうですね。
昔は「白いキャビア」とも言われたブルゴーニュ種の卵です。
パリで目にする珍味「エスカルゴの卵」はプティ・グリ種なので、違うみたいですね。
エスカルゴの試食を済ませた後は養殖場の見学をしてきました。
フランスのプティ・グリの養殖は、卵を人工的に孵化させて、それをネットなどで害獣から守った森に放すそうですが、こちらはそんなレベルではなかったです、、。
高瀬社長は元々、建設、不動産、鉄工の会社を経営されているので、エスカルゴの養殖の為に棟を建ててしまったそうです。
そもそもカタツムリは日本では害獣ですから銀行の融資も無く、大学の研究のような税金も入らないわけで、研究費も含めて全部自腹で◯億円を費やしたそうです、、。
温度管理や作業効率を上げるシステム化など、素晴らしい施設でした。
養殖を成功させた社長の夢はフランスにこのエスカルゴを売る事だそうですが、なかなかハードルが高いみたいです。
国内でも某百貨店に売り出したところ、問題があり卸さなくなった(昨今の食品偽装などを見ているところ、何をしたか想像つきますが、、。)との事。
某夢の国からもお願いされたそうですが、丁重にお断りしたそうです。
これだけの技術でお金になる事から、よく分からないオファーがたくさんあるそうです、、。
高瀬社長も病気を患い、早く自分のエスカルゴを世に広めたいそうなので、地元レストランに卸して、、といった気長に広がるのを待つ時間もないそうです。
2人で話していて、航空会社のファーストクラスのシャンパンなどのつまみには良いと思っているんですけどね、、。世界中に飛び回り、いろいろな国籍の方が召し上がる事になるので。
高瀬社長も久しぶりに面白い料理人が来たということで、いろいろなことを教えてくださいました。
幾つになっても夢を語れる高瀬社長はとても素晴らしいと思いました。
近い将来、世界中の食卓に高瀬社長の夢の詰まったエスカルゴが並ぶようになったら素敵ですよね。